土佐九斤


 

 土佐九斤は国、県の天然記念物には指定されておりません。

 

鶏の審査標準に記載されているため、誤認されている方がいます。

 

 土佐九斥ってなんて読むんですか?

 




 

 家禽図譜 附審査法 明治28年10月6日 (1895)初版発行 

              佐藤信平編 東京家禽雑誌社発行

 

 コーチン種(亜細亜種)   30/57頁

 

 此称は昔時安南支那に蕃殖せしものにしてコーチン、チャイナ種とも称すへきを略して単にコーチン種若くは安南種と名つく 最初亜細亜大陸の諸国に移り後英国に輸入して益々改良を加へし 以来一層広く伝搬せり 本邦にも輸入せられて明治八九年の頃大に流行せり 俗にクキンと唱ふるもの即ち是なり・・・・・・・

 



 

 畜産各論    田口晋吉 明治33年 (1900)

 

1 亜細亜鶏種  イ「コーチン」品種  136/182頁

 

 「コーチン」品種は交趾支那品種とも称し 本邦に於てクキン九斤)と俗称するものなり 其「コーチン」と称するは交趾支那の原産と誤認せるに因るなり 然れども実は支那の中部及北部の産なり 欧州に始めて輸入せしは1843年英領香港よりせり・・・・・・・

  



 

 家禽図譜    石崎芳吉 編 明治43年6月(1910)

 

 コーチン種   53/108頁

 

 支那ノ原産ニシテ、英国ニ輸入セラレテ其名声ヲ博シ、形質上大ニ改良ヲ受ケタルモノナリ。欧米ニテハニ上海種ト称シ、我国ニテハ九斤鶏トモ謂フ。・・・・・・・

 

 

 

名古屋コーチン種  52/108頁

 

バフ色コーチン種を小形ニシタルガ如キ鶏ニシテ、嘴及ビ脛ハ鉛青色ヲ呈シ、脚羽少ク尾羽黒色ナリ。



大正6年(1917)11月、農事に関係ある県下各官公署団体にて組織せる第14回土佐農事会に於て土佐九斤改良の議起り、従来の羽色を統一し、体型体色の固定能力の増進を期せむがため、茲に本種標準の制定を見るに至った。


 家禽標準

       中央畜産会 大正8年 (1919)

 


 

 家禽審査標準 

         大日本家禽会 早乙女勇五郎編 大正11年 (1922)

 

 本種は高知県下に於いて実用鶏として到る所に飼養せらる卵肉兼用種にして産卵力強く肉質佳良なり、バフ・コーチンとシヤモの交配より成ると云う、左記の標準は大正六年十一月第十四回土佐農事会に於いて協定せるものなり

     体   量   雄一貫匁内外  雌七百匁内外

     性能産卵力   一ヶ年百五十個以上

     卵 殻 色   紅絹色

     卵 殻 質   厚硬緻密

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 上記の記述は家禽審査標準の附録、本会未協定種、土佐九斤を参照のこと。

 バフ・コーチンとシヤモの交配については、本書以外に記載が見当たらない。

 



 

 尾長鶏並に諸鶏の記(五十嵐文書)

                五十嵐正龍 記   大正12年 (1923)

 

  九斤鶏数十年前支那より来れり 其後配合孵化の結果種類多し  身体長大にして性温順なり 褐色又黄色黒色胴切白色等数色あり 毛色の美きものは  すべし

 

土佐九斤と称するもの近年出来たり 身体長大にて褐色にてきれいなり

 

  洋種鶏数十年前西洋より来れり 種類甚だ多し産卵多きを以て利益はあれども日本鶏に比し品位劣れるに依り趣味すくなく見るに足るものなし

 

   大正十二年三月二日記す

 


 家禽審査法 附 産卵能力検定法  釘本昌二 昭和3年 (1928)

                 


 

 家禽図鑑 三井高遂・衣川義雄 著  昭和8年 (1933)

 

    土 佐 九 斤

 

 その初め何処より移入されたるか詳ならざれども、明治15年(1882)頃エーコク種類似の鶏数羽が高知県高知市に移入されたるに端を発し、漸次高知市附近及び安芸郡の東部に蕃殖飼養せられ、次いで明治17年(1884)頃より同27年(1894)頃に亘り、讃岐より讃州統と称するバフコーチン種に類似せる羽色淡褐にして脚羽を有せざる種鶏数十羽が高知市附近及び安芸郡の東部、殊に吉良川村に多数移入され、

 

 その純粋蕃殖並びにエーコク種類似鶏との雑種蕃殖が行われて居たが、偶々明治30年(1897)安芸郡室戸町に於いて同雑種中に優良なるものを生じたれば、同郡吉良川村多田徳次氏これを飼養し、又同年土佐郡朝倉村産の同雑種中特に優良なものを吉良川村田中泰吉氏がこれを飼養するに及び、その雛何れも優良にして同地方に多数蕃殖飼養され、遂に吉良川統の名を得るに至った。

 

 而して該鶏は何れもバフプリマスロック種に稍類似し体重1300匁( 4.875kg )位、雌1000匁( 3.75kg )位ありて寧ろ肉用鶏の観ありしが、次いで明治35-6年に至り、吉良川統中より頭部及び胴部の白なるものを生じ、之を胴切りと称し各所に飼養された。

 

 又、明治40年(1907)頃吉良川統より更に羽色濃褐なる優良鶏を生じ、吉良川統の大赤と呼ばれ、県下各地に普及せらるゝに至り、就中、吉良川村植野利之助氏飼養の大赤は最も名声を博し、現土佐九斤の優良鶏は同氏の系統に属するものが多い。

 

 吉良川統は羽色に於て淡褐・胴切・大赤の三系に分れ、時代により或は地方によって飼育家の嗜好を異にしたが、本種の卵肉が大阪市場に於て土佐九斤の名の下に存在を認めらるゝに至りしは明治44年(1911)頃以来の事である。

 

 此の間各種洋鶏の移入を見たるも何れも土佐九斤の如く一般に普及せしものは少なく、独り本種のみ本県に於ける実用的鶏種として普く飼養された。

 

 然し未だ羽色不統一にして固定十分ならず、尚ほ改良すべき点少なからざりしを以て、大正6年(1917)11月、農事に関係ある県下各官公署団体にて組織せる第14回土佐農事会に於て土佐九斤改良の議起り、従来の羽色を統一し、体型体色の固定能力の増進を期せむがため、茲に本種標準の制定を見るに至った。

 

 爾来本種の改良の跡著しく、今や羽色の統一、体型の整備能力の増進等に良好なる成績を挙げ、近時著しく蕃殖せられ、現今土佐九斤の飼養羽数は県内全鶏種の約6-7割を占め、殊に高岡郡・安芸郡に多く分布すると云ふ。

 


  外  貌

雄 

 嘴は鮮黄色、眼は赤黄色、冠は単冠にして中等大、五歯に分裂して直立する。肉髯及び耳朶はその大さ冠に準ふ。

冠顔面肉髯及び耳朶は鮮紅色を呈し、雌雄共に耳朶に鮮明滑沢なる白色を示すものは失格とする。

 背は長さ適度にして広く凹斜向上し、鞍羽は豊富。胸は広闊にして充実し、肩部稍張り、主翼羽は黒色である。

 尾は大さ体に適応して豊実し、尾羽は黒色にして緑色の光輝がある。

但し、その黒褐及び栗褐色程度のものは失格としない。

 

 体躯は広くして充実し、軟羽はよく発達する。

前述以外の羽色は黄金色にして光輝を有し、頭・頸・肩・背・翼・及び鞍羽は褐赤色を帯びる。

 腿は大にして軟羽を豊富に有し、脛は長さ適度にして強く、脚羽を着けず、色は濃黄色を呈する。

但し、脚鱗及び脛の外側に赤色の現れるのは失格としない。

 

 嘴の色は鮮黄色、眼は赤黄色、冠は単冠にして直立し、冠・顔面・肉髯及び耳朶は鮮紅色を呈する。

 背は水平にして広く長く、胸も広くして充実し、肩部は稍張っている。

 主翼羽は黒色。尾羽は体に準ひ、黒色を呈する。

但し尾羽に黒褐色及び栗褐色のあるものは失格としない。

 

一般に胴伸びある事を希望すれども、実際は胴詰りの甚だしきもの多く、これは改良すべき点である。

 軟羽は殊に充実し、腿は大にしてよく軟羽を被り、脛は長さ適度にして強く、脚羽を着けず、脛及び趾の色は濃黄色である。 

 



 

日本鶏の歴史(昭和18年刊)(1943) 

 



 

土佐はニワトリ王国-土佐で作られたニワトリ達-

            

       都築政起 土佐史談第233号 平成18年12月(2006)

 

 

 トサクキンは中国原産の品種コーチンを元にしてつくられたとのことである。明治、大正の頃の土佐では、コーチンのことを九斤と呼んだようである。

これを元にして土佐で作られたので、土佐九斤の名前がある。

 

 本種の体型は、同時期に愛知県および熊本県で、やはりコーチンを元にして作出された名古屋種や熊本種に類似するが、これら3者の間には羽装色に違いがある。

 

すなわち、名古屋種がいわゆる「猩々」と呼ばれる褐色羽装をもつのに対し、トサクキンは黄褐色の、いわゆる「淡毛猩々」と呼ばれる羽装をもつ。

 

熊本種も「淡毛猩々」羽装をもつが熊本種とトサクキンは尾において異なっている。熊本種が尾まで黄褐色であるのに対し、トサクキンの尾羽には栗色の羽と黒色の羽が混在する。

 

また、名古屋種の羽は黒色である。かつて、明治、大正時代におけるトサクキンの改良標準としては、「尾羽は黒」となっているが、現存するトサクキンに、その尾羽が名古屋種のように黒色のものはまず存在しない。ほぼ全ての個体が多くの栗色尾羽をもっている。

 

この現実にも関わらず、現在でも、トサクキンの尾は黒でなければならないいうことを高知県外のニワトリ愛好家から聞くことがあるが、筆者は、トサクキンの尾羽の色は栗色混じりで結構であると思う。

 

名古屋種や熊本種にはない特徴だからである。トサクキンの尾羽の色が黒というのは、実際のトサクキンを知らない人物の言うことである。

 

トサクキン、名古屋種および熊本種の体型もその由来もお互いに良く似ている。ところが、マイクロサテライトDNAに基づいて、これら3者の遺伝的類縁関係を調べてみると、トサクキンと熊本種は極めて近縁であったが、名古屋種はこれら2者とは極めて遠い関係を示した面白いことである。

 

 

名古屋種

 

熊本種



土佐九斤には安芸系統と高岡系統があると云う

 

安芸統

 羽色が名古屋種に似て赤味が濃い、体型は高岡統に比べやや小形。

 

高岡統

 羽色は淡口と呼ばれ黄金色を帯びる。白羽の刺し毛がよく出た。