淡毛猩々チャボ



The Journal of Poultry Science, 43 : 104-108, 2006

 

チャボにみられる白尾形質に対する遺伝分析

 

都築政起1)・河野幸雄2)・木下陽介1)

1) 広島大学大学院生物圏科学研究科, 東広島市鏡山1-4-4, 739-8528
2) 広島県立畜産技術センター, 庄原市七塚町584, 727-0023

 

チャボ(矮鶏)は、直立した尾羽や短脚を特徴とする小型の日本鶏であり、我が国の天然記念物に指定されている。チャボには多くの内種がみられるが、その一つに「淡毛猩々」がある。

 

この羽装では、本来、全身が淡黄褐色であることが理想とされるが、実際には、主尾羽および主翼羽の一部が白色を示し、猩々羽装の黒色部が白色化された「白尾猩々」とでも呼ぶべき羽装を有している。

 

本研究では、淡毛猩々チャボにみられるこの白尾形質の遺伝様式を明らかにすることを目的とした。

 

詳細な観察の結果、白尾形質には2種類のものが存在することが明らかになった。1つは白色部分が純白であるものであり、他の一つは、同部分が淡い灰色を帯び、かつ灰色もしくは黒色の小斑点を有するものであった。

 

これら2種類の白尾形質および野生型の黒尾形質をもつチャボ(いずれも遺伝的背景はCo/Co ey/ey)を用いて、両親の尾羽色の組み合わせごとに、その子孫における尾羽色の分離比を調査した。

 

また、純白の白色部をもつチャボとブラウンレグホーン(野生型羽装)との交配実験を行い、各世代における尾羽色の分離比を調査した。これらの交配実験の結果、白尾形質は常染色体性の不完全優性遺伝子によって支配されていると考えられ、ホモ型個体では、主尾羽および主翼羽の一部が純白になること、ヘテロ型個体では、これらの部分が純白ではなく、薄灰色を帯び、かつ灰色もしくは黒色の小斑点が散在することが明らかとなった。

 

また、ブラウンレグホーンとの交配から得られたF2あるいは戻し交配世代の個体のうち、e+/e+の遺伝子型をもち、Co遺伝子をもたない個体は、尾羽および主翼羽の一部のみでなく胸部も白色となるpyle型の羽装を示したことから、この遺伝子は、尾羽や主翼羽に限らず羽装全体に対する黒色抑制遺伝子であると考えられた。

 

さらに、この遺伝子は褐色に対しても淡色化作用をもつこと、ホモ型個体では、ヘテロ型個体に比べ褐色部分がさらに淡色化されることが明らかになった。

 

以上の特徴および遺伝様式は、既報の優性白(I)遺伝子のそれと酷似している。よって、チャボにおける白尾形質を支配している遺伝子は、I遺伝子である可能性が高いと考えられる。

 

いずれにせよ、本研究は、日本の愛玩鶏の中に白色羽装を支配する優性遺伝子が存在することを初めて明らかにした研究であると考えられる。

 

キーワード: チャボ、日本鶏、羽装突然変異、優性白色羽装

 

 



淡毛猩々チャボ作出の原鶏♀           平成11(1999)

淡毛猩々チャボ原鶏♀に白色チャボ♂を交配する。 平成12(2000)


平成14(2002)年4月撮影


平成15(2003)年5月3日撮影

 日本のチャボには雄の謡羽及び本尾を褐色に固定する遺伝子が欠如しているようである。

 外国鶏の北京バンタム(バフ色)を交配して、尾羽への褐色の着色を追求する。


平成20(2008)年撮影 北京バンタム(バフ)♂との交配種、脚羽あり。

平成24(2012)年撮影

平成25(2013)年12月17日撮影

尾羽への褐色が固定する可能性が確認できる個体である。

着色を優先しているためチャボとしての体形は出来ていない。

羽の先端が丸羽になっている。


平成26(2014)年3月21日撮影

ちゃぼの体形とするには、短脚に誘導する必要がある。

尾羽の立ち方を理想の形に誘導する。

ちゃぼとしての優美さが感じられない。

理想の姿を追求します。

 


平成28(2016)年11月21日撮影



外国鶏種における主尾羽への着色の状況

日本鶏の主尾羽着色鶏

  三河種 雄     熊本種 雌雄     熊本種 雄